- 業種・規模
- 北海道の食品製造業(中規模)
- 現場のタイプ
- Flow(流れる工程)
- 抱えていた課題
- 高温設備での手作業の負担と、品質を左右する工程の安定化、過大投資の回避
1. 何が起きていたか
食品を高温の温水で連続的に加熱する大型の設備への、液体の投入工程でした。液体は3種類あり、それぞれ手作業で用意し、量を確かめ、投入していました。一つは短い間隔で一定量を入れ、製品の品質を抜き取りで測って微調整します。一見すると単純な繰り返しですが、この工程が製品の味と食感を左右し、しかも高温設備のそばでの作業で、繁忙期にはこの工程に2名が張り付いていました。とくに、液体をバケツで計量して投入する作業に、人手が取られていました。
2. 何をしたか
まず、すべてを一度に全自動化する構成は見送りました。代わりに、工程を性質ごとに分けました。連続して濃度を見ながら制御する必要がある工程、決まった量を入れれば足りる工程、人が抜き取りで確認すれば十分な工程、そして今回は手動のままにする工程です。
そのうえで、自動化の段階を工程ごとに変えました。最も品質に効く液体は、濃度を連続で測りながらポンプで自動投入する仕組みにし、製品側の抜き取り検査も残して二重に確認します。次の液体は、決まった量を入れる簡単な仕組みにとどめます。残る一つは、自動で測る装置に熱の限界があり、無理に自動化すると冷却設備で大掛かりになるため、今回は手動のまま見送りました。装置は、共通で使える部分の設計をそろえて費用を抑えつつ、液体が混ざらないよう専用に分けました。
自動投入の仕組みには、3つの運転モードを実装しました。
・フィードバック制御(センサーで状態を見ながら自動調整)
・間歇投入(現在の人間のオペレーションを模倣し、量を調整しながらバッチ式で投入)
・鍵付き強制運転(メンテナンス等で強制的に動かす場合)
3. 何が変わったか
手作業で液体を計量して投入していた1名分の作業がなくなりました。残る1名が供給用のユニットに液体を入れれば、あとは濃度を連続で測りながら投入量が自動で調整されます。繁忙期にこの工程へ張り付いていた2名が、1名になりました。作業者の役割は「自分で測って入れる」から「機械を見て判断する」へ移り、高温設備のそばでの危険な手作業も減りました。全部を自動化していれば過大な投資になっていたところを、効く工程だけに絞ったことで、必要な分だけの投資にとどめられました。
4. この事例が示すこと
自動化は、「全部やる」か「やらない」かの二択ではありません。その間に、工程ごとに自動化の段階を変える、という設計の幅があります。大事なのは、工程を分解して、どこを機械に任せ、どこを人が見るかを仕分けることです。全部を機械に置き換えるのではなく、人と機械で役割を分ける——この仕分けそのものが、投資の良し悪しを決めます。
工程を、自動化の段階で仕分ける
全自動でなく、人と機械で役割を分ける
この判断の考え方は 人手不足をAI・ロボットで補うとき、何を選べばいいか で詳しく解説しています。
ロボットは完成品ではなく、人が補い、時間とともに広がる仕組みです
経済産業省(ロボット政策研究会報告書、2006年)は、ロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。腕の形をした装置だけがロボットではありません。この事例の自動投入は、濃度を測る計測器(センサー)、投入量を判断する電装・制御(知能・制御系)、液体を送り込むポンプ(駆動系)の3つがそろい、「測る・判断する・動かす」が一つの仕組みとして閉じています。定義上、これはロボットです。
※「測る」は、見る・検知・計測をまとめた言い方です。カメラで見るのも、センサーで測るのも、同じ「測る」。
ただし、3つの要素を機械だけで揃える必要はありません。ある要素が機械に向かないとき——たとえば測る装置に熱の限界があり、無理に自動化すると付帯設備が大掛かりになるとき——その要素は人が補えます。この事例でも、自動で測れない工程は人が確認を続け、機械の計測も人の判断で二重に確かめています。機械が担いきれない部分を人が埋める。これが人と機械の役割分担であり、欠けた要素を人が補えば、3要素を機械だけで揃えなくても仕組みは成立します。
さらに、機械と人の境目は固定ではありません。いま機械に向かない工程も、計測や制御の技術が進めば、機械に移せるようになる可能性があります。今回手動で残した工程も、いつか機械が担えるようになるかもしれません。つまりこの仕組みは、いまの形が完成形ではなく、人が補う範囲を残しながら、時間とともに機械の担う範囲を広げていけます。どこまでを機械で構成し、どこを人がいつまで補うか——その判断が、投資の良し悪しと、これからの伸びしろを決めます。
ロボットの定義について詳しくは ロボットとは何か(3つの要素) で解説しています。