CASE

全自動を見送り、工程ごとに自動化の段階を分けた

導入食品2026.06.01
測定可能な結果 工数削減
手作業2監視・判断1
人と機械で役割を分担
プロジェクト・プロファイル
業種・規模
北海道の食品製造業(中規模)
現場のタイプ
Flow(流れる工程)
抱えていた課題
高温設備での手作業の負担と、品質を左右する工程の安定化、過大投資の回避

1. 何が起きていたか

食品を高温の温水で連続的に加熱する大型の設備への、液体の投入工程でした。液体は3種類あり、それぞれ手作業で用意し、量を確かめ、投入していました。一つは短い間隔で一定量を入れ、製品の品質を抜き取りで測って微調整します。一見すると単純な繰り返しですが、この工程が製品の味と食感を左右し、しかも高温設備のそばでの作業で、繁忙期にはこの工程に2名が張り付いていました。とくに、液体をバケツで計量して投入する作業に、人手が取られていました。

2. 何をしたか

まず、すべてを一度に全自動化する構成は見送りました。代わりに、工程を性質ごとに分けました。連続して濃度を見ながら制御する必要がある工程、決まった量を入れれば足りる工程、人が抜き取りで確認すれば十分な工程、そして今回は手動のままにする工程です。

そのうえで、自動化の段階を工程ごとに変えました。最も品質に効く液体は、濃度を連続で測りながらポンプで自動投入する仕組みにし、製品側の抜き取り検査も残して二重に確認します。次の液体は、決まった量を入れる簡単な仕組みにとどめます。残る一つは、自動で測る装置に熱の限界があり、無理に自動化すると冷却設備で大掛かりになるため、今回は手動のまま見送りました。装置は、共通で使える部分の設計をそろえて費用を抑えつつ、液体が混ざらないよう専用に分けました。

自動投入の仕組みには、3つの運転モードを実装しました。
・フィードバック制御(センサーで状態を見ながら自動調整)
・間歇投入(現在の人間のオペレーションを模倣し、量を調整しながらバッチ式で投入)
・鍵付き強制運転(メンテナンス等で強制的に動かす場合)

3. 何が変わったか

手作業で液体を計量して投入していた1名分の作業がなくなりました。残る1名が供給用のユニットに液体を入れれば、あとは濃度を連続で測りながら投入量が自動で調整されます。繁忙期にこの工程へ張り付いていた2名が、1名になりました。作業者の役割は「自分で測って入れる」から「機械を見て判断する」へ移り、高温設備のそばでの危険な手作業も減りました。全部を自動化していれば過大な投資になっていたところを、効く工程だけに絞ったことで、必要な分だけの投資にとどめられました。

4. この事例が示すこと

自動化は、「全部やる」か「やらない」かの二択ではありません。その間に、工程ごとに自動化の段階を変える、という設計の幅があります。大事なのは、工程を分解して、どこを機械に任せ、どこを人が見るかを仕分けることです。全部を機械に置き換えるのではなく、人と機械で役割を分ける——この仕分けそのものが、投資の良し悪しを決めます。

工程を、自動化の段階で仕分ける

液体の投入工程をどう自動化するか
工程を性質ごとに分解する
連続制御が必要
品質に直結 → 連続濃度計+自動注入ポンプ(半自動制御)
定量投入で足りる
決まった量を自動投入(簡易スキッド)
人の確認で十分
製品側で抜き取り測定を継続
今回は見送り
熱の限界で大掛かりに → 手動を継続
判断
すべてを同じ段階で自動化しない=過大投資を回避
全部を自動化する必要はない。工程ごとに、必要な段階だけを選ぶ。

全自動でなく、人と機械で役割を分ける

フルオートメーション(全工程を機械に置換)
過大な投資・熱や洗浄の制約で大掛かりに
人と機械で役割を分ける
この事例の設計
機械:連続して測る・決まった量を入れる(可搬スキッド・モジュール式)/人:機械を見て判断する・抜き取りで確かめる
必要な部分だけの投資・高温作業の負担を軽減・品質は安定
設計の工夫
共通で使える部分はそろえて費用を抑え、液体が混ざらないよう専用に分ける
自動化と手作業の間に、人と機械で役割を分ける設計領域がある。

この判断の考え方は 人手不足をAI・ロボットで補うとき、何を選べばいいか で詳しく解説しています。

ロボットは完成品ではなく、人が補い、時間とともに広がる仕組みです

経済産業省(ロボット政策研究会報告書、2006年)は、ロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。腕の形をした装置だけがロボットではありません。この事例の自動投入は、濃度を測る計測器(センサー)、投入量を判断する電装・制御(知能・制御系)、液体を送り込むポンプ(駆動系)の3つがそろい、「測る・判断する・動かす」が一つの仕組みとして閉じています。定義上、これはロボットです。

※「測る」は、見る・検知・計測をまとめた言い方です。カメラで見るのも、センサーで測るのも、同じ「測る」。

ただし、3つの要素を機械だけで揃える必要はありません。ある要素が機械に向かないとき——たとえば測る装置に熱の限界があり、無理に自動化すると付帯設備が大掛かりになるとき——その要素は人が補えます。この事例でも、自動で測れない工程は人が確認を続け、機械の計測も人の判断で二重に確かめています。機械が担いきれない部分を人が埋める。これが人と機械の役割分担であり、欠けた要素を人が補えば、3要素を機械だけで揃えなくても仕組みは成立します。

さらに、機械と人の境目は固定ではありません。いま機械に向かない工程も、計測や制御の技術が進めば、機械に移せるようになる可能性があります。今回手動で残した工程も、いつか機械が担えるようになるかもしれません。つまりこの仕組みは、いまの形が完成形ではなく、人が補う範囲を残しながら、時間とともに機械の担う範囲を広げていけます。どこまでを機械で構成し、どこを人がいつまで補うか——その判断が、投資の良し悪しと、これからの伸びしろを決めます。

ロボット=3要素が閉じた仕組み
測る
センサー(濃度計)
判断する
制御(投入量)
動かす
駆動(ポンプ)
3つがそろい、一つの仕組みとして閉じる。腕の形でなくても、ロボットに該当する。
一つの要素が機械に向かないとき
人と機械で役割を分ける
「測る」を人が補う
例:計測器が現場の熱に耐えられない工程 → 人が測り、機械が動かす
技術が進めば(可能性)
「測る」も機械へ移せるようになるかもしれない
いまの構成は固定ではない。段階的に、機械の担う範囲を広げていける
3要素でロボットは成立し、欠けた要素は人が補える。その境界は、技術とともに動く可能性がある。

ロボットの定義について詳しくは ロボットとは何か(3つの要素) で解説しています。

よくあるご質問

Q.自動化するなら、全部まとめて自動にした方が効率的では?
A.必ずしもそうではありません。工程によって、連続制御が要るもの、決まった量で足りるもの、人の確認で十分なものがあります。すべてを同じ段階で自動化すると、不要な部分にまで投資がかかり、かえって割高になります。
Q.一部を手作業のまま残すのは、中途半端ではないですか?
A.いいえ。自動で測る装置に熱の限界があるなど、無理に自動化すると付帯設備で大掛かりになる工程があります。そこを手動で残すのは、過大な投資を避けるための合理的な判断です。全部を機械にするより、効く工程に絞る方が投資は活きます。
Q.人と機械の役割分担とは、具体的にどういう状態ですか?
A.機械が連続した計測や定量の投入を担い、人が機械を見て判断し、抜き取りで品質を確かめる、という役割分担です。人を置き換えるのではなく、人の役割を「作業」から「監視と判断」へ移します。
Q.どの工程を自動化すべきか、どう見分けるのですか?
A.工程を分解し、それぞれが「連続で制御が要るか」「決まった量で足りるか」「人の確認で十分か」を見ます。品質に直結し、かつ自動化が現実的な工程から優先します。技術的に無理がある工程は、無理に含めません。
Q.高温の設備でも、こうした自動化はできますか?
A.工程によります。高温に耐えるセンサーが選べる工程は自動化でき、装置の耐熱に限界がある工程は手動で残す、という仕分けをします。現場の条件に合わせて、できる範囲を判断します。
Q.全部を自動化しないと、投資の効果は薄いのでは?
A.逆のことが多いです。効く工程だけに絞ることで、投資額を抑えつつ、品質の安定や作業負担の軽減という成果を出せます。投資の大きさより、どこに投じるかの方が効果を左右します。
Q.ポンプで液体を入れる仕組みは、「ロボット」と言えるのですか?
A.はい。経済産業省はロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。この事例では、濃度を測るセンサー、投入量を判断する制御、液体を送るポンプの3つがそろい、「測る・判断する・動かす」が一つの仕組みとして閉じています。腕の形をしていなくても、定義上はロボットに該当します。
Q.3つの要素のうち一つが自動化できない工程は、ロボット化をあきらめるしかないのですか?
A.いいえ。欠けた要素は人が補えます。たとえば計測器が現場の熱に耐えられない工程では、「測る」を人が担い、機械が「動かす」を担う、という分け方ができます。機械に向かない要素を人が補う、この役割分担です。3つの要素を機械だけで揃えなくても、人と機械を組み合わせれば、その工程に必要な仕組みは成立します。
Q.今は自動化できない工程は、ずっと手作業のままですか?
A.必ずしもそうではありません。計測や制御の技術は進歩します。いまは機械に向かない工程でも、技術が進めば機械に移せるようになる可能性があります。いまは人が補い、将来そこを機械へ移す、という段階的な進め方ができます。だから、いまの構成は固定ではなく、時間とともに機械の担う範囲を広げていけます。

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