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設備・IT投資にいくらかけるべきか

機械(AI・ロボット)やシステムを入れたいという相談で、経営者が最初に聞くことはだいたい同じです。「うちは、いくらまでお金をかけていいのか」。この問いには、二つの勘違いがよく混ざっています。

一つめは、機械への投資(設備投資)とシステムへの投資(IT投資)を、ごちゃまぜに考えてしまうことです。この二つは会計のルール上も別物で、適正な金額の目安もぜんぜん違います。お店でたとえれば、設備は厨房の機械や冷蔵庫、ITはレジや予約アプリにあたります。

二つめは、業種を考えずに「売上の○%」という一つの数字で語ってしまうことです。適正な金額は、業種によって何倍も変わります。建設業が機械にかけるお金は売上の1〜2%ですが、物流業(運送・倉庫)では5〜8%にもなります。同じ「適正な金額」でも、業種が変われば中身がまるで違います。

この記事では、食品・物流・建設・農業・林業・漁業・製造・サービスの8業種について、機械への投資とシステムへの投資、それぞれの目安を一覧にします。そのうえで、ある1年の数字だけで判断してはいけない理由と、借入・リース・減価償却まで踏まえて、自社が実際にいくらまで投資できるかを、自社の決算書から見つける方法を整理します。

1. 業種別・投資の目安(早見表)

まず全体像です。機械への投資の割合は、株式市場に株を公開している企業約3,700社の決算データから。システムへの投資の割合は、企業のIT動向を調べているJUASの2025年調査と、総務省の白書をもとに、中小企業の実態として整理しました。自社の業種の行を探してみてください。

業種機械への投資の目安(売上に対する割合)システムへの投資の目安(売上に対する割合)もっと攻めたいときのIT目標
食品(食品工場)4〜5%1.5〜2.0%2.5〜3.5%
物流(運送・倉庫)5〜8%1.5〜2.5%3.0〜4.0%
建設1〜2%0.8〜1.5%2.0〜3.0%
農業3〜4%1.0〜2.0%2.0〜3.0%
林業3〜4%1.0〜2.0%2.0〜3.0%
漁業3〜4%1.0〜2.0%2.0〜3.0%
製造4〜5%1.5〜2.0%2.5〜3.5%
サービス2〜3%2.0〜3.0%3.5〜5.0%

この表で大事なのは、数字そのものより「業種でこれだけ違う」という事実です。機械にお金がかかるのは物流・製造・食品、軽いのは建設・サービスです。システムにお金がかかるのはサービス・物流、軽いのは建設です。自社がどこに位置するかを知ることが、計画づくりの出発点になります。

補足が一つあります。システムへの投資には、二つの性格があります。一つは、今あるシステムを動かし続けるための投資(守りのIT)。もう一つは、売上を伸ばしたり新しいことを始めたりするための投資(攻めのIT)です。日本企業はIT予算の7〜8割を守りのITに使っており、攻めのITに回せる分は限られているのが実情です(JUAS 2025)。表の右端「攻めたいときのIT目標」は、この攻めのITを上積みした場合に届く水準と考えてください。

AI・ロボット(AIを搭載したロボット)の場合

AI・ロボットは、機械(設備)とシステム(IT)の両方の性質を持ちます。そのため、機械の目安とシステムの目安を単純に足すと、同じ一台を二重に数えてしまいます。

考え方は、会計の基本に沿うとはっきりします。ロボット本体は「設備」として一度に投資し、何年かで償却していく資産です。一方、AIの更新やデータの運用、他のシステムとの連携は、導入後に毎年かかり続ける「運用の費用」で、性質はシステム(IT)への投資に近いものです(※)。

だから、こう分けて考えるのが実態に合います。導入時の費用は「設備投資」の目安で見ます。ただしAIの分だけ高くつくため、その業種の目安の上限側で見ておきます。そして導入後にかかり続ける更新・運用は「IT投資」の目安で、毎年の費用として見ます。 一台の中で、買うときは設備、使い続けるときはシステム、と時間で分けるわけです。技術が進むほど、後者(運用のIT)の比重は増していきます。

ここで一つ、知っておいてよいことがあります。この「ロボットは設備、AIの運用は費用」という分け方そのものは、大企業や投資の世界では、すでに当たり前に議論されています。けれども、その議論はほとんどが大企業や最新の人型ロボットの話で、「自社の業種だと、売上の何%が目安か」という、地に足のついた中小企業の判断には、ほとんど踏み込んでいません。この記事の早見表は、その空白を、業種別の目安として埋めることを目指しています。

※ ハードウェア(ロボット本体)を有形固定資産、ソフトウェア・AIの更新や保守を費用または無形資産として扱う考え方は、一般的な会計処理の整理に基づきます(日本公認会計士協会の実務指針等)。具体的な仕訳は契約内容により異なるため、税理士等の専門家にご確認ください。

2. なぜ業種でこんなに違うのか——「何にお金をかけるか」が違う

業種で目安が違うのは、お金をかける対象がまるで違うからです。8業種が「何に」お金を使っているかを見ると、数字の差が腑に落ちます。

食品・製造は、ものを作るライン(製造の流れ)そのものが財産です。加工する機械、検査する機械、自動で動く設備にお金がかかります。最近は、人の目の代わりに不良品を見つけるAI外観検査や、重い箱詰め・運搬を肩代わりするロボットなど、人手のかかる作業を機械に置き換える投資が増えています。機械にお金がかかる一方で、システムは脇役になりがちです。

物流(運送・倉庫)は、倉庫・トラック・自動で動く倉庫設備といった大きなものにお金がかかり、機械への投資の割合は全業種でもトップクラスです。さらに、トラック運転手の働く時間に上限ができた「2024年問題」をきっかけに、配送を効率化するシステムや、倉庫の中身を管理するシステムにもお金をかける会社が急に増えています。機械もシステムも両方重い、お金のかかる業種です。

建設は、機械・システムのどちらも全業種でいちばん軽い業種です。工事ごとに必要な道具が変わり、自社で重い設備を抱え込みにくいからです。ただし、ここも変わりつつあります。「2024年問題」と、パソコンや機械を使った工事(ICT施工)の流れで、工程を管理するソフトや、ドローンを使った測量への投資が、低いところから急に伸び始めています。

農業・林業・漁業は、お金の多くが「機械」に向かいます。農業ならセンサーやGPSのついた農業機械やドローン、林業なら高性能な林業機械、漁業なら魚を獲るための機器やセンサー、という具合です。機械の中にセンサーやAIが組み込まれている形が多いので、機械への投資とシステムへの投資の境目があいまいになりやすいのが特徴です。

サービスは、機械が軽い分、システムへの投資が相対的に重くなります。人の手で回す仕事が多いので、予約管理、顧客管理、キャッシュレス決済、データ分析といったシステムが、そのまま仕事の効率を左右します。機械よりもシステムにお金をかける業種です。

自社の業種の段落を読むと、なぜその金額になるのか、お金のかけどころが腑に落ちるはずです。「いくらが適正か」は、その業種が何にお金をかけるかで決まる。一つの数字で語れないのは、このためです。

3. 落とし穴その1——ある1年の数字だけで見てはいけない

機械への投資は、ある1年だけを見ると判断を誤ります。毎年同じ額が出ていくものではないからです。

大きな機械やラインを入れた年は割合が跳ね上がり、何も入れない年は下がります。上場企業のデータでも、年によって割合が数倍に振れる業種は珍しくありません。車を買った年だけ家計の出費が大きく見えるのと同じで、その1年だけを見て「使いすぎ」「足りない」と判断するのは危険です。

自社を正しく見るには、二つの見方があります。

一つは、自社の設備投資を3〜5年の平均でならして見ることです。買った年と買わない年をならせば、自社が本来どれくらいのペースで投資してきたかが見えます。もう一つは、これまでの投資の積み重ねを見ることです。決算書の財産の一覧表(貸借対照表)には、これまで買ってきた機械や設備がいくら分あるかが載っています。実は、すでに設備を積み上げてきた会社ほど、次の投資に使えるお金が厚くなります。その理由は、次の章で説明します。

4. 落とし穴その2——金額が大きいほど、借入・リース・減価償却がからむ

もう一つの落とし穴は、「売上の○%」というその年の稼ぎの割合を、「買える金額の上限」と思い込むことです。

ロボットや自動化の機械は、1台で数百万円から2,000万円ほどします。これをその年の手元資金だけで一括購入する中小企業はめったになく、ふつうは借入やリースで何年かに分けて払います。

借入とリースを整理します。借入は、銀行などからお金を借りること。リースは、買い取らず「月々いくら」で機械を借りて使う方法です。どちらも大きな出費を何年かに分けるしくみで、だから買える金額の上限は「その年の利益」ではなく「あといくら借りられるか」で決まります。

そして、いちばん見落とされやすいのが減価償却です。少し難しいので、具体例で説明します。

100万円の機械を買って、10年使うとします。会計のルールでは、買った年に「100万円使った」と一気に記録せず、「毎年10万円ずつ、10年かけて使った」ことにします。これが減価償却です。

大事なのはここです。2年目から10年目までは、決算書に「今年も10万円使った(減価償却費)」と書かれますが、実際にはお金は1円も出ていきません。支払いは最初の年に終わっているからです。

つまり減価償却費は、「すでに払い済みで、いま財布から出ていかない費用」です。だから、借りたお金を返す力を考えるときは、利益にこの減価償却費を足し戻すのが正しいのです。出ていかない費用は、まるごと返済に回せるからです。

ここに、自社を見直すヒントがあります。利益が薄くても、これまで機械に投資してきた会社は、減価償却費の分だけ返済の元手が厚く、次の投資に踏み込む余力があります。「うちは利益が薄いから、もう投資は無理だ」と思っていた会社が、実は投資できる、というケースです。逆に、これまで設備が少なく人手で回してきた会社は、売上があっても返済の元手が薄く、大きな投資には慎重になったほうがよいことになります。自社がどちらに近いかは、決算書の減価償却費がいくら計上されているかを見れば、見当がつきます。

5. 「本当に使えるお金」の見つけ方

機械への投資にあといくら使えるか。これは銀行が融資を判断するときに見るのと同じ考え方で、正式にはこう表せます。

追加投資余力 = 簡易キャッシュフロー × 許容返済年数 - 既存の有利子負債
※ 簡易キャッシュフロー = 営業利益 + 減価償却費

用語が硬いので、ひとつずつ崩します。

  • 簡易キャッシュフロー:毎年の利益(営業利益)に、減価償却費(出ていかない費用)を足したものです。1年で返済に回せるお金を表します。
  • 許容返済年数:何年で返しきるか。ふつうは3年ほどが一つの目安です。
  • 有利子負債:すでに抱えている、利息のつく借金(借入金など)です。

平たく言えば、こういうことです。

(毎年の利益 + 減価償却の分)×(何年で返すか)-(すでにある借金)= あと使える投資額

自社の決算書で確かめられます。損益計算書にある営業利益と減価償却費を足し、そこに返したい年数(たとえば3年)をかけ、すでにある借入を引く。残った金額が、無理なく追加投資に回せる現実的な上限です。「簡易キャッシュフロー」「有利子負債」という言葉は、銀行や税理士との打ち合わせでもそのまま通じます。

「何年で返すか」は、ふつう3年ほどが目安ですが、地方では事情が変わります。都市部に比べて人を雇うのが難しく、一人辞めるだけで仕事が止まりかねません。人手を機械で補う投資は「もうけを増やす投資」であると同時に「会社を続けるための投資」でもあります。だから地方では、返す年数を5年ほどまで延ばし、もう少し大きな投資を認める判断もあり得ます。

こう考えると、「売上の○%」はあくまで入口の目安にすぎないと分かります。本当に見るべきは、自社のこれまでの投資のしかた、返済に回せる元手の厚み、すでにある借入とのバランス——銀行がお金を貸すときに見るのと、同じ目線です。

6. まとめ——目安は出発点、使える金額は自社の決算書から逆算する

投資にいくらかけるべきか、整理します。

まず、機械への投資とシステムへの投資は、別物として考えます。業種で目安が何倍も違うので、自社の業種の目安(早見表)で出発点を知ることが先決です。そのうえで、自社の設備投資をある1年の割合だけで見ず、3〜5年でならして投資のペースを確かめます。そして金額が大きい投資ほど、借入・リース・減価償却を踏まえ、「売上の何%か」ではなく「自社が返せるお金で何年分か」で測ります。

業種の目安は、地図の上で「いま自社がどこにいるか」を知るための入口にすぎません。実際にいくらまで投資できるかは、自社の決算書(営業利益・減価償却費・既存の借入)から逆算しないと分かりません。

株式会社カイタクシは、中小企業の機械・システム投資の計画づくりを支援しています。自社の業種の目安と決算書を照らし合わせて「本当に使える金額」を確かめること、補助金・借入・リースを組み合わせた資金計画づくり、ロボットやAI外観検査などの機械を実際に導入するところまで、まとめてご相談いただけます。「うちはいくら投資できるのか」を感覚ではなく数字で確かめたい経営者の方は、お気軽にお問い合わせください。

7. よくある質問

Q.自社の業種の設備投資の目安は?
A.機械への投資の目安は売上に対する割合で、食品4〜5%、物流5〜8%、建設1〜2%、農業・林業・漁業3〜4%、製造4〜5%、サービス2〜3%が目安です。業種によって何倍も違うため、まず自社の業種の行を早見表で確認してください。
Q.利益が薄くても設備投資はできますか?
A.できる場合があります。これまで機械に投資してきた会社は、減価償却費(すでに払い済みで、いま財布から出ていかない費用)の分だけ返済の元手が厚く、次の投資に踏み込む余力があります。決算書に計上された減価償却費の額を見れば見当がつきます。
Q.設備投資とIT投資は分けて考えるべきですか?
A.別物として考えます。会計のルール上も別で、適正な金額の目安も異なります。たとえば食品なら機械への投資は売上の4〜5%、システムへの投資は1.5〜2.0%が目安です。
Q.「本当に使えるお金」はどう計算しますか?
A.(営業利益+減価償却費)×許容返済年数-既存の有利子負債、で求めます。営業利益と減価償却費を足し、返したい年数(ふつう3年ほど)をかけ、すでにある借入を引いた残りが、無理なく追加投資に回せる現実的な上限です。
Q.地方の事業者は投資の考え方が違いますか?
A.違う面があります。地方では人手を機械で補う投資が「もうけを増やす投資」であると同時に「会社を続けるための投資」でもあるため、返す年数を5年ほどまで延ばし、もう少し大きな投資を認める判断もあり得ます。
出典
  • 機械への投資の割合:株式市場に公開された企業約3,700社(金融業を除く)の決算データから算出した、売上に対する設備投資の割合(業種別の中央値、2025年)
  • システムへの投資の割合:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2025」、総務省「令和6年版 情報通信白書」、経済産業省「DXレポート2.1」
  • 設備投資・ソフトウェア投資のしくみ:中小企業庁「中小企業白書」、財務省「法人企業統計調査」

※ この記事の割合は業種全体の目安であり、個々の会社にとっての適正額を保証するものではありません。機械への投資の割合は上場企業をもとにした数字、システムへの投資の割合は中小企業の実態をもとにした数字で、出どころが異なります。実際の投資の判断にあたっては、自社のお金の状況に合わせた個別の検討をおすすめします。

自社がいくら投資できるか、決算書から一緒に確かめます。

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