「仕事は受けたいが、機械が足りない」。そう感じたとき、多くの現場が新しい工作機械の購入を検討します。けれど、その前に確かめたいことがあります。いま持っている機械は、どれだけの時間、実際に削っているか——です。
1. 工作機械は、削っている時間だけが金を生む
工作機械が金を生むのは、ワークを削って切り口を出している時間だけです。設計・段取り・ワークの保持・原点調整・搬出——どれも必要ですが、それ自体は金を生みません。だから儲けを伸ばす道は一つ、削っている時間そのものを増やすことです。勝つ現場は、加工している時間を最大化しています。
2. 段取りを前に倒して、手戻りを消す
削る時間を奪う大きな犯人は、現場での手戻りです。現場で初めて干渉に気づいて止め、直す——その間、機械は削れません。これを防ぐには、段取りを前に倒します。プログラムや加工条件、干渉の確認を、機械の前ではなく手前(デスク)で済ませておく。現場は加工に専念でき、手戻りが消えます。
3. 段取りを詰めれば、台数を超える
※ 比率は説明のための一例。実際の段取り・加工の割合は現場で変わります。
たとえば、こう考えてみます。段取りに時間を取られ、加工に使えているのが半分以下——段取り55%・加工45%の機械が、三台ある現場。一台あたり45%しか削れていないので、三台合わせても削る量は45%×3で135%です。一方、前段取りを詰めて、段取り25%・加工75%まで持っていった機械が、二台ある現場。一台75%なので、二台で150%。台数は一台少ないのに、削る総量は二台の方が上回ります(150% 対 135%)。しかも設備費は一台分浮く。比率は現場ごとに変わりますが、段取りを詰めることが、見えない一台分を生み出すことに近い——その構造は変わりません。
4. 協働ロボットで、夜間も削る
※ 時間・比率は説明のための一例。
たとえば、昼間に人が操作して削れるのが一日10時間、段取りを詰めて加工150%が出ているとします。ここに協働ロボットを足し、人のいない夜間14時間も動かす。無人運転は昼より遅く、加工効率は8割ほどにとどまるかもしれません。それでも、時間が1.4倍あるので、夜間だけで112%。昼の150%に夜の112%が積み上がり、合計262%。同じ機械が、二倍以上削るようになります。一台あたりの速さは落ちても、削る時間の総量で大きく勝つ。これが、工作機械と協働ロボットを組み合わせる勘どころです。比率は現場で変わりますが、速さでなく総量で考える——その筋は変わりません。
ただし、止まる原因を先に整える
順序があります。止まっている時間を減らす前に、なぜ止まっているかを見極めること。段取りに時間がかかるのは道具や材料の置き場が定まっていないから、手戻りが多いのは手順が人によってばらつくから——足元が整理・標準化されていないまま、夜間に動かす仕組みだけを入れても、止まる原因は残ったままです。
自動化が効くのは、現場が整い、止まる原因が減ってからです。順序は、止まる原因を見極める→段取りと待ちを減らす→その上で人のいない時間を使う。この順で進めると、投資の無駄が減ります。
※ どの工程から手をつけるかは どこから自動化するか、何をどこまで機械に任せるかは 人機協調とは何か、費用が何に対して発生するかは 成果報酬の線引き で扱っています。
機械を増やす前に、いまある機械の稼働を最大化する。私たちが最初に一緒に行うのは、その見極めです。あなたの現場で、機械はどれだけ削っていて、なぜ止まっているのか。そこから始めます。