自動化を考えるとき、つい「一番大変な工程」や「一番人手のかかる工程」から手をつけたくなります。けれど、そこから始めても、全体は速くなりません。
全体の速さは、「一番細いところ」が決めている
どんな現場も、作る・運ぶ・検査するといった工程がつながって流れています。そして流れ全体の速さは、その中で最も遅い工程のペースで決まります。経営工学では、これをボトルネック(瓶の首)と呼びます。瓶を傾けたとき、中身の出る速さを決めるのは、瓶の一番細い首の部分です。どれだけ胴が太くても、首が細ければそこまでしか出ない。
だから、ボトルネックではない工程をいくら速くしても、全体は変わりません。むしろ、速くした分だけ手前に在庫が積み上がるか、後ろが手待ちになるだけです。手が止まっていることと、モノが滞っていることは、結果として同じ——全体が一番細いところに合わせて待っている、ということです。
だから、設計は「一番細いところ」から始める
投資の無駄を減らす順序は、はっきりしています。まず、どの工程が全体の速さを決めているか(ボトルネックはどこか)を判断する。そこを起点に設計する。一番細いところが広がって初めて、全体の流れが速くなり、投資が成果に変わります。逆に、目立つ工程や声の大きい工程から手をつけると、効果の出ない場所に投資して、全体は何も変わらない、ということが起こります。
これは新しい主張ではありません。経営工学(IE)が長年、生産現場で確かめてきた考え方です。一番細いところを見つけ、そこから整える。自動化やAI・ロボットの導入も、この順序の上に乗せて初めて効きます。
「一番細いところ」は、たいてい稼働率に表れる
全体の速さを決めている工程は、多くの場合、設備や人が「待っている時間」に表れます。一般に、現場の設備が実際に動いている時間の割合(稼働率)は、思うほど高くないと言われます。段取り替えや材料待ち、確認のための手戻りで、設備が止まっている時間が積み上がるためです。とくに多品種少量の現場ほど、この「動いていない時間」が大きくなりがちです。
ここに、投資をかけずに成果を出せる余地があります。新しい設備を増やす前に、いま持っている設備の止まっている時間を減らす——段取りを短くする、人がいない時間にも動かせるようにする。同じ設備のまま、動く時間が増えれば、生産量は伸びます。
機械の動きが人より遅くても、考え方は変わりません。昼間に人が動かし、人のいない時間に機械が動く。一台あたりの速さでは人に及ばなくても、動かせる時間そのものが増えれば、投資は見合うようになります。「速さ」より「動いている時間」を見る——これが、一番細いところを広げる現実的な一手です。
「一番細いところ」を、どう設計するか
ボトルネックが見つかったら、次は「そこをどう設計するか」です。ここで、ロボットの3要素——測る・判断する・動かす——が道具になります。その工程を3つに分解し、どの要素を・どこまで・いつ機械にするのが、この現場に合うのかを判断する。一番細いところを、全自動にするのか、一部を機械にして残りを人が担うのか、いまは人で将来機械に移すのか。かたちは現場によって変わります。
※「測る」は、見る・検知・計測をまとめた言い方です。カメラで見るのも、センサーで測るのも、同じ「測る」。
近年は、機械を動かすための準備(段取りやプログラム作成)が、技術の進歩で以前より手軽になりつつあります。これまで大規模な生産現場でしか合わなかった自動化が、多品種少量の現場にも手が届く範囲に入りはじめています。
※ 工程を3要素に分解する考え方は ロボットとは何か で、その判断の進め方は 判断とは何か で扱っています。
順序が、投資の良し悪しを決める
まとめると、順序はこうです。まず、全体の速さを決めている一番細いところを見つける。次に、そこを3要素に分解して、どこまで機械にするかを設計する。この順で進めれば、投資は効く場所に集中し、無駄が減ります。
私たちが最初に一緒に行うのは、この判断です。あなたの現場で、全体の速さを決めているのはどの工程か。そこを、どう設計するのが合うのか。そこから始めます。